クォーター最後のオフェンスをどう守る?シクサーズが見せた「Hit the Switch」

シクサーズvsニックスの一戦から、スイッチ後にダブルチームを仕掛ける「Hit the Switch」を解説。クォーター終了間際の残り時間を、ディフェンスがどう利用したのかを見ていきます。

クォーター最後のオフェンスをどう守る?シクサーズが見せた「Hit the Switch」

10月31日(日本時間)に行われたフィラデルフィア・76ers vsニューヨーク・ニックス。

今回は、第2Qの最後、ニックス44-53シクサーズの場面を見ていきます。

クォーター終了間際は、エース級の選手がボールを持ち、時間を使ってからピック&ロールや1on1で仕掛けることが多くなります。自分たちの攻撃でシュートを決め、相手には攻め返す時間を残さない。オフェンスとしては、そのような形で終えたいところです。

今回取り上げるのは、

2Q最後に、ニックスのエース、ブランソンの攻めに対して仕掛けたシクサーズの「Hit the Switch」。

シクサーズは、このHit the Switchを使って、シュートを打たせず守り切ることに成功しました。

「Hit the Switch」とは一体何なのでしょうか?

「Hit the Switch」とは?

まずは、ピックアンドロールにおける、スイッチディフェンスについて簡単に説明します。

スイッチすると、ボールマンについていたDFと、スクリーナーについていたDFのマッチアップが入れ替わります。オフェンスは、このスイッチを利用して、自分たちに有利なマッチアップを作ろうとします。例えば、ガードが相手のビッグマンを外に連れ出して1on1を仕掛けるイメージです。

特にクオーター最後はこのスイッチを利用した1on1で攻められることが多く、このままだとディフェンスは簡単に攻められてしまいます。そこで、有効になるのが、Hit the Switchです。

Hit the Switchとは、ピック&ロール(以下、PnR)に対してスイッチした後に、ボールマンにダブルチームを仕掛ける守り方です。Maccabi Hit(マッカビヒット)とも言われます。

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スイッチした後、相手が仕掛けようとしたところで、もう1人のDFがダブルチームに向かいます。ダブルチームを仕掛けると、さすがのエースでも攻めることはできず、パスを離さざるを得ません。

実際にシクサーズがどのように守っていたのか、プレーを見ていきましょう。

2Q最後|スイッチからダブルチームへ

ニックスは、エースのブランソン選手にハート選手がスクリーンをかけます。

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シクサーズはスイッチで対応。ブランソン選手を守っていたエッジコム選手は、ゴールへダイブするハート選手につきます。

ここまでは普通の形ですね。しかし、ここからです。

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エッジコム選手は、そのまま追いかけるのではなく、途中で折り返してブランソン選手へ。スイッチで交代したDFと2人で、ダブルチームを仕掛けました。

一度スクリーナーを追ってから、ボールマンへ戻る動きがポイントです。

空いたハート選手には、近くにいたマキシー選手が一時的に対応。ダブルチームの背後もカバーしています。

ブランソン選手は味方へパスし、再びボールを受け取りますが、残りは約4秒。

味方がもう一度スクリーンに向かうと、今度はマキシー選手がハードショウで前に出て、進路を塞ぎます。

ブランソン選手はパスを出しますが、シュートにはつながらず時間切れ。

ダブルチームで一度ボールを手放させ、攻め直しにも対応する。 シクサーズは、残り時間を利用して最後の一本を守り切りました。

なぜ、最初からダブルチームに行かない?

個人的に面白かったのは、エッジコム選手がハート選手を一度追ってから、ブランソン選手へ戻っていることです。

最初のスクリーンの時点で、ダブルチーム(ブリッツ)やハードショウに行っても良さそうです。

この点について、戦術メディア「Slappin’ Glass」は、ローラーからダブルチームに向かう「Hit on the Roll」の解説で、ショートロールへの対応を挙げています。ショートロールとは、スクリーナーがゴール下まで走り切らず、途中でパスを受ける動きです。

ハードショウやブリッツをすると、このショートロールで対応をされてしまうことがあります。下の動画は、ケビンデュラント選手へのダブルチームに対して、渡邊雄太選手がショートロールでカウンターをかましています。

最初からボールマンに2人でプレッシャーをかけると、スクリーナーがショートロールでパスを受け、その先の数的優位を使って攻撃できます。

一方、一度スイッチしてローラーを守れば、そのパスをすぐには使わせずに済みます。ローラーがゴールへ向かったところで、担当していたDFが離れ、ボールマンへダブルチームを仕掛ける。これによって、オフェンスが最初からトラップを受けた場合とは違う状況を作れます。

出典:Slappin’ Glass「“Hit” on the Roll – Mismatch Prevention」(2024年11月25日)

クォーター最後だからこそ、時間を味方につけられる

今回の場面では、ショートロールへの対応に加えて、残り時間も重要だったと思います。

時間が十分にあれば、ダブルチームを受けても、パスをつないでフリーの選手を探したり、もう一度PnRをやり直したりできます。

しかし、クォーター終了間際、エンド・オブ・クォーター(EOQ)では、そのための時間が限られています。

ブランソン選手は、スイッチ後のマッチアップを攻めようとしたところでダブルチームを受け、ブリッジズ選手へパスを出しました。

再びボールを持ったときには、残り約4秒。そこからスクリーンを使って仕掛けようとしても、綺麗なシュートは打てません。クォーター終了間際だからこそ、さらに有効に働く戦術だと思いました。

エースにボールを手放させるダブルチームと、ゲームクロックの管理

今回の守備を見て、改めてゲームクロックの重要性を感じました。同じダブルチームでも、残り時間によって、相手が攻め直せる余裕は変わります。時間をうまく利用することも、バスケの面白さの一つですね。

最近はBリーグでも、スイッチで有利なマッチアップを作り、日本人選手が狙われる場面をよく見かけます。もちろん背後のカバーやローテーションは必要ですが、そのまま1on1をさせずに対応する「Hit」は、今後さらに見られるようになるかもしれませんね。

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