宇都宮のハードショウをどう攻略した?川崎が繰り返したEmpty PnR
川崎ブレイブサンダーズvs宇都宮ブレックスの一戦から、ハードショウに対する「Empty PnR(エンプティ・ピック&ロール)」を解説。
10月26日に行われた宇都宮ブレックスvs川崎ブレイブサンダース。
第3Q終了時点では宇都宮が71-63と8点リードしていましたが、第4Qに川崎が29-18と上回り、92-89で逆転勝利しました。
今回取り上げる戦術は、
宇都宮のハードショウに対して、川崎がエンプティコーナーとスリップを使い、スクリーナーを何度もフリーにしていたこと。
特に第4Qの終盤、マット・ボンズ選手の3Pからアレックス・カーク選手のダイブまで、似たような攻撃を繰り返していました。
なぜ、これほどスクリーナーがフリーになったのでしょうか?
ハードショウに必要なTag DF
まずは、宇都宮が行っていたハードショウについて簡単に説明します。
ハードショウとは、ピック&ロール(以下、PnR)に対して、スクリーナーのDFが前に出てボールマンの進行を遅らせる守り方です。
ボールマンのDFがスクリーンを回避して戻るまで、スクリーナーのDFが一時的にボールマンを守ります。
ただ、ここで一つ問題があります。
スクリーナーのDFが前に出ている間、スクリーナーは誰が守るのか?
そこで必要になるのがTag(タグ)です。スクリーナーがゴールへダイブした場合、周囲のDFが一時的にその選手に対応し、スクリーナーのDFが戻るまで時間を稼ぎます。この一時的に対応する選手を、Tag ディフェンスといいます。
基本的には、ボールがある側の「ストロングサイド」のDFがタグに入るケースが多いです。ちなみに、ボールがない反対側は「ウィークサイド」と呼ばれています。もちろん、ウィークサイドからカバーする場合もあります。
今回の川崎は、このTag DFを難しくする配置を使っていました。
コーナーを空ける「Empty Corner PnR
Empty とは、選手が誰もいない状態や場所のことを指します。
Empty Corner PnR(エンプティコーナーPnR)PnRを行うサイドのコーナーにオフェンスの選手を配置しない形です。
宇都宮ブレックス📝
— Hardworker (@basket_tool) February 6, 2026
✅Empty Corner
コーナーを空ける(Empty Corner)ことでピックアンドロールを攻めやすくする。通常ボールサイドのコーナーDFがダイブに対応(Tag)するが、EmptyにすることでそのTagが不在となる。
逆サイドのヘルプも機能せず、ギャビンのダンクが決まるpic.twitter.com/fDVc1JPc8w
通常、ストロングサイド(ボールがあるサイド)のコーナーに選手がいれば、その選手を守るDFがタグに入ることができます。
しかし、コーナーを空けることで、そのタグ役をなくすことができます。
つまり、ハードショウでスクリーナーのDFが前に出ても、近くにカバーできるDFがいない状況を作れるわけです。
実際に川崎がどのように攻めていたのか、プレーを見ていきましょう。
4Q 5:18|ボンズの3Pで逆転
まずはマット・ボンズ選手がトップでボールを持ち、コーナーの松山選手へパスを出した場面です。ボンズ選手はそのまま松山選手へスクリーンをかけに向かいます。
このとき、PnRを行うサイドのコーナーはエンプティになっています。
宇都宮はショウで対応し、ボンズ選手はスクリーンから離れて3Pラインの外へポップ。エドワーズ選手は松山選手への対応で前に出ており、近くにタグに入るDFもいません。
結果、ボンズ選手がフリーで3Pを成功させ、川崎が逆転します。
4Q 4:29|再び同じ形からボンズの3P
次のオフェンスも川崎はコーナーを空け、ボンズ選手がスクリーンへ向かいます。
宇都宮は再びハードショウで対応しますが、ボンズ選手はスクリーンをかけきる前にスリップし、そのまま3Pラインの外へポップします。
スリップ(Slip)とは、スクリーンをかけきらずに早めに離れるプレーのことです。相手がハードショウやスイッチで対応してくる際に、有効なカウンターの一つになります。
今回もフォトゥ選手はボールマンに対応しているため、ボンズ選手への戻りが遅れ、またしてもボンズ選手がフリーで3Pを成功させました。
4Q 3:22|3回連続で同じPnR
続いては荒谷選手とボンズ選手によるPnR。
川崎はまたコーナーを空け、宇都宮は変わらずハードショウで対応します。ボンズ選手はスリップからポップし、再びフリーで3Pを放ちます。
このシュートは外れましたが、3回連続で同じような形からフリーのシュートを作っています。
個人的には、ここで宇都宮がディフェンスを変えてもよかったのかなと思いました。ハードショウはボールマンにプレッシャーをかける守り方ですが、すでにボンズ選手はシュートを決めており、調子も良さそうでした。
それなら、ある程度ドライブを許容してでも、ボンズ選手をフリーにしない選択肢もあったはずです。もちろんチームとしてのルールもあるでしょうし、試合中に守り方を変えるのは簡単ではありませんが、、
4Q 2:03|エンプティでなくてもスリップ
次のオフェンスはエンプティコーナーではありません。
しかし、川崎が狙っているのは同じところです。宇都宮のハードショウに対してスクリーナーが早めに離れ、DFの戻りが遅れたところをスリップ(Slip)で攻めます。
このプレーで、アブドゥル・ラフマン選手がフリーで3Pを成功。
エンプティコーナーだけでなく、スリップそのものも宇都宮のハードショウへのカウンターとして使っていました。
4Q 1:26|最後はカークのダイブ
次のオフェンスでは、再びエンプティコーナーPnRを選択します。
今度は荒谷選手とアレックス・カーク選手の2メンゲーム。宇都宮はハードショウで対応しますが、カーク選手はゴールへダイブ。コーナーにもタグに入るDFがいません。
逆サイドのトレイケルがTagに入りますが、間に合わずそのままカーク選手がゴール下で得点し、川崎がリード。
同じエンプティコーナーPnRでも、ポップとダイブの両方から得点につなげていました。
松山選手もハードショウへの対応を意識
ちなみに試合後、松山選手も宇都宮のハードショウについてコメントしています。
「相手がハードショーしてくるので、その中でいかに流れを作るか」
また、自分からスクリーンをかけに行くことや、DFを2人引きつけてパスを出すことも意識していたそうです。
出典:川崎ブレイブサンダース公式|10/26 宇都宮戦 ゲームレポート
実際に試合を見ても、宇都宮のハードショウに対して、川崎がスクリーナーの動きや配置を工夫していたことが分かります。
宇都宮はどう対応すべきだった?
今回の川崎vs宇都宮で面白かったのは、川崎が同じ攻撃を何度も繰り返していたことです。
宇都宮のハードショウに対して、川崎はエンプティコーナーとスリップを使い、スクリーナーをフリーにしていました。
個人的には、ボンズ選手に2本連続で3Pを決められたところで、宇都宮もディフェンスを変えたかったなと思いました。
もちろん、チームとしてのルールもあるでしょうし、試合中に対応を変えるのは簡単ではありません。
ただ、ハードショウを続ける以外にも、ボールマンのドライブをある程度許容してスクリーナーを守るなど、別の選択肢もあったはずです。
川崎がカウンターを繰り返したことも面白かったですが、それに対して宇都宮がどう対応するかという点でも、考えさせられる試合でした。
みなさんなら、このエンプティコーナーPnRにどう対応しますか?
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